Link Numazu ②-1

この物語を振り返ってみると、1人の男に突き当たる。

松澤宏樹。


彼がなぜタイにいるのか。

そしてなぜ彼は熱海にコーヒーのラボを作ったのか。


これを書こうとすると、年が明ける。


だが、彼がそこでQアラビカグレーダーのセミナーを開いたことによって、物語が大きく動き出す。


たまたま、3人の男がそこで出会うからだ。


1人は、すまコーヒーの藤井。

もう1人が、アンティークドアの一場。


最後にこの男、

ハワイからやってきた、マックス。


本名はよく知らない。


彼は、サーフィンと星をこよなく愛し、たぶん女性も、あまりに好きすぎて日本からハワイへ渡った男だ。


そこでカウコーヒーに出会う。


コナコーヒーではない。

カウだ。


彼はカウコーヒーの生産に携わることになり、カウコーヒーを愛すことになる。


そんなマックスが、Qグレーダーの資格をとるべく熱海へやってきた。


これを手にして。

カウコーヒー、しかも生豆。


マックスはこの生豆をセミナーに参加した人間に配った。


「カウコーヒーの素晴らしさを広めたい。」


愛すべきものの為に海を渡った男が、

愛すべきものを手にして帰ってきたわけだ。


しかし、

僕はこの生豆を受け取らなかった。


なぜならば、僕には焙煎する技術も焙煎機も持っていないからだ。


そんな僕に、マックスが微笑んだ。


「たとえ焙煎をしなくとも、あなたが抽出したら、それはあなたのコーヒーでもある。」


そんなことを言われて嬉しくなって、

僕は、このカウコーヒーを受け取った。


この時の僕は、


抽出することによって、このカウコーヒーに責任を持つ、

そしてそこには大きなプレッシャーがかかるということをよく理解していなかった。


あぁ、マックスはなんて腕のいい営業マンだったのだろう。


本番の30日が、近づいてくる。